水の精霊

映画・ドラマ・アニメ

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先日、水の精霊の映画を立て続けに観たので、

最初はまずそのお話から。

観た映画は、

オンディーヌ 海辺の恋人 (2009年 アイルランド、アメリカ)と、

水を抱く女(2020 ドイツ、フランス)、

という作品でした。

オンディーヌ 海辺の恋人 を観た後に、

水を抱く女アマゾンプライムビデオに勧められてしまい、

ミッドナイトなのに、思わず連続視聴してしまったわけですが、

ここまで関連がある映画とは思いませんでした。


オンディーヌ… の方のヒロインの名前は、題名通りのオンディーヌ

水に抱かれた女の方のヒロインは、ウンディーネ

これってギリシャ神話に出てくる水の精霊ウンディーネ(undine)のことで、

フランス語読みドイツ語読みの違いだそうです。

こうなってくると、

ギリシャ神話での ウンディーネの逸話というものを知りたくなってくるわけですが、

ウンディーネ - Wikipedia

wikipediaによると、

“ウンディーネには本来魂がないが、人間の男性と結婚すると魂を得る。しかしこれには大きな禁忌がつきまとう

そしてその禁忌とは、

①ウンディーネは水のそばで夫に罵倒されると、水に帰ってしまう

②夫が不倫した場合、ウンディーネは夫を殺さねばならない

➂水に帰ったウンディーネは魂を失う

なのですが、

この逸話に沿った物語が オンディーヌ…と、水を抱く女 なのですね。

ただ物語の内容自体は全くの別物であって、

オンディーヌ…の方はハリウッド的なおとぎ話からアプローチした作品、

水に抱かれた女は、ヨーロッパ映画の暗鬱としたストーリー、描写に支配された作品、

というのが、ちゅうの印象です。

どちらも好きな作品ですが、おとぎ話的ファンタジーを求めるならオンディーヌ、

メランコリーな恋愛ドラマを求めるなら水に抱かれた女でしょうか。

今回は ドイツ映画(フランスも)の 水に抱かれた女 のお話しをさせていただこうと思っているのですが、

オンディーヌ 水辺の恋人 が劣るということでは決してありません。

親権を持たないが、闘病中の娘のために働く一人漁師が

漁の網で、一人の美しい女性を釣り上げてしまうというところから始まるオンディーヌ…の物語は

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インパクトでいえば、コチラの方が面白い作品だと ちゅうは思っています。

主人公の漁師役、コリン·ファレルのイケメン振りも、

女性にはポイントが高いのではないでしょうか。(眉毛も凄い)

こちらも是非ご覧になって頂きたい作品ですね。


今回ご紹介させていただく 水を抱く女 は、

ヨーロッパの著名な映画祭を受賞している評価の高い作品です。

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ドイツ映画で、ベルリンが舞台の恋愛ものといえば、

1987年の ベルリン天使の詩 という映画を思い出します。

ベルリン天使の詩といえば、田舎の高校生だった ちゅうは、

映画雑誌の評判が良かった本作を、レンタルビデオ屋さんで新作入荷後、すぐに借りてきたのですが、

内容が全く頭に入ってこない作品の印象でした。

覚えていることといえば、天使が堕天した時に、

景色が色付いていくことくらいで、

ストーリーは人間に恋をした天子(おじさん)の話しか記憶のない作品でした。

友人にはいい格好して、良い映画と言うものの、

実際は意味が分からない退屈な映画というのが、

恥ずかしながらちゅうの最初の感想でした。

後に、この映画のリメイクがハリウッドで作られたり、

本作を再度鑑賞する機会を得たりして、

ちゅうの見る目の無さを痛感することになるのですが、

水を抱く女 を見た時に、このベルリン天使の詩 を思い出したのです。

恋する人外、水の精霊と天使という存在がそうさせるのですが、

それについては後ほどお話ししたいと思います。

今回の映画は、解釈が多く分かれる作品ですので、

ちゅうの解釈で最後までネタバレしてみたいと思いますので、

ご理解のほどよろしくお願いいたします。


🆘ネタバレ注意🆘

場所はベルリン、女の職場のすぐ近くにある、カフェのオープンテラス。

一組の男女のもつれから物語は始まります。

女は、ベルリンの都市開発の歴史を扱う博物館(?)で働くウンディーネ

別れたくないウンディーネと、別れたいヨハネス(彼氏)の、

決して噛み合うことのない話合い

別れるなら殺す、と言葉にするウンディーネは、

まるで本物の精霊ウンディーネのよう。

彼女の出社時間が来たため、11時に同じ場所で会う約束をして別れる二人。

ウンディーネは、11時にカフェに戻ってみても、

元恋人はいません。

諦めきれない様子でカフェの中を探すウンディーネは、

カフェにある巨大な水槽(印象的な潜水士の置物が入っている)の前で、

ある男と運命的な出会いをします。

男の名はクリストフ。(職業は潜水士)

先程まで博物館でウンディーネのガイドを聴いていた男でした。

水槽の前で、何気ない挨拶を交わす二人でしたが、

その目の前の巨大な水槽が割れる事故に巻き込まれてしまい、

大量の水を浴びる二人。(ウンディーネはガラスの破片で軽いケガも)

この水に関わる災難が、二人の恋の始まりでした。

(ウンディーネが水槽の前に来たのは、ある声 に導かれていたことも記して置きます)


失恋の痛手からなのか、別れるなら殺すまで言った彼女の元来の性格なのかわかりませんが、

二人の恋は情熱的に進んでいきます。(クリストフも情熱的)

ある時クリストフは、ウンディーネに潜水士の置物をプレゼントします。

水槽が割れたときに、クリストフが持ち帰ったものと思われますが、

ウンディーネは常に持ち歩く程、その置物を気に入ってしまいました。

職場にも持ち込み、誤って落として右足を折ってしまうこともありました。(ボンドで補修しました)


駅に向かい(通勤中)、お互い肩寄せ恋人歩きをして歩道を歩いている時に、

同じように恋人と歩く元恋人のヨハネスとすれ違います

クリストフの肩に顔を乗せたまま振り返り、一瞥くれるウンディーネ

一方のヨハネスの方も、その時にウンディーネを認識していて、

その日、例のカフェにウンディーネを呼び出し復縁を願いますが、(彼女いるのに…)

既にウンディーネの心には新しい恋人クリストフしかいないことを知らされます。

しかし、

例のカフェでヨハネスと会ったことを知ったクリストフは、

面会もしていないと嘘をつくウンディーネを疑ってしまいます。

ウンディーネからすれば、クリストフに余計な心配をかけたくないからついてしまった嘘でしたが、

これが原因で、クリストフと音信不通になってしまいます。

ウンディーネは居ても立ってもいられなくなり、

クリストフの仕事場であった沼に出掛けるのですが、

水中でクリストフに事故があり(職務中)、意識を失い病院に運ばれたことを知ります

病院でのクリストフとの悲しい面会。

そこで分かったことは、

脳死状態になってしまったこと

足を怪我したこと(潜水士の置物のように)

クリストフからの電話の日時には、既に脳死状態にあったこと

(クリストフは電話など出来なかった状態。では誰と電話で話していたの?


夜、ウンディーネは、元彼ヨハネスの豪邸に忍込み、(女と同棲していることも確認)

ヨハネスが一人でプールで泳いでいるところを

頭を水中に押し付け、(真上から頭を押さえ付け)

窒息させます

そしてその足で、

あたりが明るくなる頃、クリストフの仕事場の沼に行き

沼の中へ消えていきます…

同じ時、病院では、

目を醒ますはずのないクリストフが、ウンディーネの名を叫びながら復活していました…

精霊の伝説…的な見方をすれば、

ウンディーネが水に帰り、魂を失うこと(禁忌➂)

早く実行すべきだったヨハネスを殺害することで、

クリストフにかかっていた禁忌②(死、ここでは脳死)を解除したと考えます。

この禁忌➂ともに

禁忌②(別れたら殺す)を行わなければ、

クリストフが死んだまま(脳死のまま)だと考えます。

では、誰が時間軸の可怪しい疑いの電話をクリストフの声で入れたのか、ですが、

本来はヨハネスに振られた時に、禁忌②によりヨハネスを殺さなければならなかった。

それなのにクリストフという新恋人の出現の嬉しさからか、禁忌②が未実行できてしまいました。

その未実行の罰が疑いの電話なのではないでしょうか。

禁忌②未実行の罰は、非科学的なファンタジーの範疇のことなのでしょう。


不可解なことがあったからこそ、

水の精霊の名をもつ自分が、愛する人を救うために、

水の精霊の言い伝えに従い、自分を犠牲にして、

愛するクリストフを助けたいという、人間ウンディーネが演じたおとぎ話だと思うのもアリだし、

本当に精霊ウンディーネである、もアリでしょう。

ウンディーネの言い伝えに従い物語が進んだというファンタジーの説明がつけば、良いだけだと思います。

ウンディーネに恋し、別れを切り出し、ウンディーネに殺されたヨハネスは、

気の毒な点もありますが、精霊の掟で裁かれただけ、という側面もあります。

精霊の掟ならしゃーない。誰も止められないし。

これもファンタジーなおとぎ話という見方が正解だと思います。


少し脱線しましたが、

ウンディーネが水の中に消えた後、

意識を取り戻したクリストフは、行方不明のウンディーネを探しますが、

全く手がかりがありません。

そうして二年の歳月が流れたときには、職場の同僚のモニカと恋仲になり、

既にモニカのお腹にはクリストフの子供がいました。

ウンディーネ以外の人ではありますが、

幸せを取り戻したかに見えたクリストフは、

再開していた仕事で潜水している時に、

ウンディーネ(と思われる精霊⁉)と遭遇します

その夜、

心が揺れるクリストフは、あの沼に導かれるように、一人こっそり出掛けます。

一緒に寝ていたモニカはクリストフに気づかれぬよう尾行、

クリストフが池に入っていくのを見て、声を上げ呼び止めるものの、

無情にもクリストフは、池の中に消えていきます

絶望で崩れ落ちるモニカ。

水中では、

手を重ね合うクリストフと

ウンディーネ。 

そして、

放心状態のモニカの前に、

あの潜水士の置物を持った、

クリストフが帰ってきます

バッハの悲しげな アダージョ が流れる中で、

クリストフが帰ってくる再会シーンで悲しい物語は終わりを迎えます…

ここでのバッハのアダージョは泣けます


クリストフは再開した池の仕事でウンディーネに会うことで、

ウンディーネはこの池で命を落としたことを知り

同時に、自分の奇跡的な復活がウンディーネの死と関係していることを感じていたのだと思います。

助けてくれたウンディーネに感謝と最後のお別れのために再度池に入ったと解釈します。

そのお別れの結果が潜水士置物の解放

つまり自分自身の解放に繋がったのだと思います。

ウンディーネは無表情ながらもクリストフの手に自分の手を重ねます。

脳死を救ったウンディーネですから、

彼が元気になりこの沼に来るのを待っていたのではないでしょうか。

そして最後のお別れで(潜水士置物の返還で)

伝説通り、ウンディーネは完全に魂を失ったのではないでしょうか。


ウンディーネの情熱的な恋愛感は最後まで続いたわけですが、

ヨハネスとの別れの時も、

別れるなら殺す、と、

どこかで不安を感じさせるものでした。

最高温度で燃え上がっている時にも、紙一重で壊れてしまいそうな危うさをも ちゅうは感じていました。

ウンディーネの恋愛感は相当重く、人外だということがそうさせるのでしょうか、

その執念怨念みたいなものに、恐ろしさを感ぜずにはいられません

ウンディーネの女優、パウラ·ベーアの演技力ですよね。


人に恋する人外のことで、ベルリン天使の詩という映画の話を前半で少し触れました。

Bitly

人に恋した天使は、恋心から天使を辞め(堕天使)、

ベルリンの街に舞い降り、世界が色付き初めるという(後悔のない)希望のあるお話に描かれるのに対して、

水の精霊ウンディーネは、ギリシャ神話以降の様々な文献で、悲しい物語として描かれています。

天使から堕天して(地位を投げ捨てて)恋愛することと、

禁忌伴う精霊の命懸けの恋愛とが、

似ているようで全く違うものになっているのは、

主語を我々人間で捉えがちなだけかも知れません。

精霊にしてみれば、love or die みたいな感覚。

障害があるから燃えるのが恋愛

ウンディーネの性格は、そう考えると至極真っ当に思えます。

気持ちが重いとかじゃなく、必死なだけ

そんなことを思いました。


それにしても、ベルリンは魅力的な街ですね。

ベルリン天使の詩は、西ベルリンでの撮影でしたが、

当時はベルリンを東西に分ける「壁」がありました。

古い歴史のある街ではないですが、ベルリンにしかない特異な歴史を持った街です。

都市の映像美を楽しめるベルリンの映画はそういう楽しみもあります。

水を抱く女、ウンディーネは、アレクサンダー広場近くのアパートに住んでいたので、

旧東ベルリン側の位置にあたります。

旧ソ連の意向が見え隠れする建物。

映画の中のウンディーネの都市計画の説明で東ベルリン側の建物の名前が出てきました。

大きな森も東ベルリン側にあり

ウンディーネはその森の沼からやってきたのでしょうか。

ベルリンは沼地が多い地区でもあるようですし…

そんなことを考えながら、

そして、

バッハのアダージョを聴きながら、

グーグルマップのストリートビューでベルリンの街を堪能する ちゅうでした。


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